内藤 礼 (ないとう れい)

― 存在の神秘を問う現代美術家 ―

 

1961年広島県生まれ。1985年武蔵野美術大学卒業。1991年、佐賀町エキジビットスペースで発表した《地上にひとつの場所を》で注目を集め、1997年には第47回ベネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館にて同作品を展示。主な個展に、1995年「みごとに晴れて訪れるを待て」国立国際美術館、1997年「Being Called」カルメル会修道院(フランクフルト)、2005年「返礼」アサヒビール大山崎山荘美術館、2007年「母型」入善町 下山芸術の森発電所美術館、2009年「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉などがある。

パーマネント作品として2001年《このことを》 家プロジェクト・きんざ(直島)、また2010年には豊島美術館にて《母型》を発表。作品は、フランクフルト近代美術館、ニューヨーク近代美術館、イスラエル博物館、国立国際美術館などに収蔵されている。

家プロジェクト「きんざ」

豊島美術館と《母型》

― 建築とアート、そして自然が融け合う、世界的にも稀有なスケールの作品 ―

 

2010年秋、建築家・西沢立衛により香川県の小さな島に誕生した豊島美術館、そこにパーマネント作品として創造されたのが美術家・内藤礼の《母型》。瀬戸内海を望む豊島の小高い丘の中腹に立地。周囲には美術館建設を機に地元住民が中心となって再生した棚田が広がり、自然と建築、アートが融和した美しい環をつくりだしている。 一歩なかに入ると、まるで包み込まれるような豊島美術館の内部空間。現実世界から遠く離れたような異空間だ。

ゆるやかな起伏のある床には、無数の小さな穴が空き、そこから小さな水滴が生まれていく。実はこの水は、豊島という土地にそもそも宿る地下水である。水滴は、一日を通してまばゆく変化する光をまといながら、水滴同士が集まったりほどけたりしながら、時間をかけて中心に集まっていく。この場所全体が、まるで泉のような存在。天井の大きな開口部からは、四季折々の豊島の自然 ―― 風や、虫や、鳥たち ―― が舞い降りてくる。内藤の代表作《母型》は、水や光、そしてそこにいる人すべての存在を受け入れる、大きな生命体のような作品なのだ。

内藤 礼 ないとう れい